何かに狂ってる

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舞台『MOTHERLAND』感想

望郷の歌をうたうことができるのは、故郷を捨てた者だけである。――寺山修司

 

はるばる明治座へ舞台「Motherland」を見に行って来たので感想を書きます。


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(がっつり非常口が写ってて草)

disgoonie.jp

 

初めての明治座! 中にお店があるなど、社会見学としても楽しかったです。

 

いやー素晴らしかった。久々に興奮して、座っていただけなのに呼吸が荒くなっていました。行こうか迷っていたけれど来た甲斐があったものだよ。とりあえず過去の自分に言いたいのは予習はしっかりやっていけ、ということです。人物と国の関係がインプットされるまで序盤の超かっこいい台詞が全く理解できなかった。前説でも触れていたけれどやはり『キングダム』は必修科目ですね。今何巻まで出てるんだ……?

 

この先作品のネタバレがあります。舞台を鑑賞した人のみお進みください。

作品紹介はなくいきなり本題に入るよ!

 

 

 

 

 

 

 

凰稀かなめ様の宝塚仕込みの回し蹴りと鈴木みのりのアカペラ生歌が堪能できるのは『MOTHERLAND』だけ!

ありがとう……鈴木みのりに歌パートをくださってありがとう……!

 

座席は向かって左端、演出が少し見切れるのが残念でしたが、前の方だったので表情等がよく見れたのが満足。

 

前半は弱国であった秦が逆境から立ち上がり、諸国を倒す痛快サクセスストーリー、後半は秦国が勝利を手にしながら何かを失いつつ血塗られた玉座につくまでの物語。後半の、1人ずつ登場人物が命を落としまるで地獄のような焦土が現れる光景にゾクゾクしました。アドリブも多量で、長丁場の舞台なのに途中で退屈だと思うことはなく最後まで魅了されました。

 

「母国」とはどこなのか。昌平君は秦のためにずっと戦ってきたが、彼の祖国と、愛した人は楚にいた。印象的なシーンは多々ありましたが、「お前に楚は倒せない」と、仕えてきた秦王に昌平君が告げられるシーンが1番胸に来ましたね……思い出しただけで動悸がしてきた。

 

秦王政の、自分が骨を埋める大地への渇望も、同情というか、共感してしまうものがある。縋りつける国家がほしいというのは、人間に共通するものなのでしょうか。

 

前半は韓信にフォーカスが当てられていたことから、彼のことを注意して見てはいたのですが、身代わりと本物が入れ代わり立ち代わりしていたのは気が付かなかった。もう1回見返したらどの場面がどちらか気が付くだろうか、わからない気もする。

 

あと趙の軍師、李牧……今回の狂言囃し。狂気じみた演技に圧倒されました。第一の敵として立ち塞がるのがとても強大で恐ろしかった。その呆気ない最期も印象的。

 

合従軍の戦いでは、李環が伝説の軍司の言葉を借りた人として神格的な位置を持ちながら、後半に行くにつれてその意味が薄れていくのも面白い演出だなと思います。神の言葉、天の言葉ではなく、大地の人間の言葉が意味を持つようになるということでしょうか。李環と春霖、歌唱力カンスト親娘。李環役の子は調べたら元アイドルなんですね。そりゃうまいわけだわ。

 

本当に、合戦や人物の思惑の交錯が複雑だったのに上手くまとめあげているのが素晴らしいなあと思います。ほかにも印象的なシーンがあったはずなのですが、強烈なシーンが次から次へとやってくるせいですべてを覚えることができなかったのでストーリーについてはこのあたりで。3時間45分もあったから仕方ないね。コロナの関係で8時までに終わる舞台が多かったので、こんなに遅くに帰るのは久々でした。

 

ストーリー以外では、衣装が素晴らしく、細部まで綺麗でした。皆様、踝まで丈があるのに踏まないであんなに激しい殺陣ができるんだからすごい。ひらひらしてるのが最高ですね。動きに合わせて靡くのが美しい。

あと音楽も素晴らしかったです。途中で流れたボーカル入り音源が最高だった。ちょっとどのシーンか言えないのが残念ですね。物販にOSTがあったら買うところだった。

 

優曇華の花。漢字の読み方はオタクなので知っていましたが、その意味するところは知らなかった。天下を取ることができなかった敗者にも敗者の物語があり、その激動が緻密に描かれる。何度見ても新しい発見がありそうな最高の舞台でした。円盤買います。