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「新本格魔法少女りすか4」感想

こんにちは。秋見鳥です。

 

新本格魔法少女りすか」という本を読んだのはもう10年以上前の話です。

 

学校の本棚に行儀よく並んだ本しか知らなかった私にとっては、まさしく鮮烈な出会いでした。そこから西尾維新先生の本を読み漁り、「戯言シリーズの舞台だから」というただそれだけの理由で京都で一時生活していたので、一生の決め手となった出会いといってもよいでしょう。

私が手に取った時にはすでにシリーズ3巻は発売され、雑誌『ファウスト』は休刊か廃刊かわからない状態にあり、物語シリーズがアニメ化されることが発表されていた時でした。あと1巻で完結、という言葉に胸を躍らせましたが、物語シリーズが脚光を浴びるにしたがって日の目を見なくなっていったので、まあもととなる連載元が刊行されないなら忘れられたシリーズとして消え去ってもおかしくないよね、と。そう思っていました。

 

そんな「新本格魔法少女りすか」の最終巻がこの12月9日に発売しました。まさか今になって続刊が出るなんて。西尾維新大辞展で新規イラストが出ただけでこっそり泣いたのに、ちゃんと完結できただなんて。新作の波に乗れなかった古参は喜びでしんでしまいそう。生きていてよかった。読み終わったので、あまり整理できているとは言い難いですが感想を書きます。

 

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※作品のネタバレがあります。

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ぶっちゃけ3巻までの内容をまったく覚えていない状態で読んだのであらすじはとばします。
ああ、こんな話だったなあという懐かしさで胸がいっぱい。文庫版を買うのはしゃくなのでノベルス版を買い、答え合わせをしようと思います。

 

17年、という作中でも大きな意味を持つ年月を経て作品が刊行されるのは、出版された後となってはおそらく意図的なのだろうと思うのですが、「あと1巻で完結」と言われていた3巻が出た頃から、予定されていたことだったのでしょうか。

 

最終的には家族の物語、と言えるんだろうな。創貴が行動を起こす原理になるのが「父親の自殺」というのもなんとも面白い。10歳の時からどこか達観していた創貴は17年経った後のほうが生きやすいのかもしれませんね。生と死の間を行き来するりすかに課せられたものが出産、というのも、因果なものだなあと思います。海の中でカッターナイフで胸を突く、その瞬間の、互いを信頼しきっている関係が、まさしくこの十数年間見たかったものでした。

魔法の中心地でありすべての元凶だと思っていたものが、狭い遊園地に変わっていた、あるいは遊園地だった時のしっぺ返しをくらったような肩透かしな感覚がすごかったですね。そこで現実に引き戻されたというか、時がたち、かつて自分が子供であったこと、今はそうではないことのギャップを感じた、寂しいような何とも言えない名シーンです。

娘が父を産むというのも神話的でよいですね。作中の登場人物が死して守ったのが我々のいるこの世界なのだ……というのは、ほかの物語でもありそうですが、読後その衝撃がとても大きかったのは、世界中に血の雨が降るという描写の賜物でしょう。

 

少女がやがて女性になり、母となる。子供が親を離れ大人になる。その過程をバイオレンスたっぷりに、少しダークな魔法を絡めて書く、成長物語でした。2014年も、2020年も、間違いなく、いつだって最先端で新しくて本格的王道的な魔法少女物語。どんな魔法少女物が登場しても、この物語には代え難いと思う形で完結することができてよかったです。

 

新型コロナウィルスが落ち着いたらまた行くべき場所が増えましたね。軍艦島、観に行かねば……。

きみぼくシリーズの最終巻もいつまでも待っています。

 

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