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ミュージカル『EQUAL』感想(11日昼・13日夜)

こんにちは。秋見鳥です。

ヒューリックホール東京での『EQUAL』来日公演を2回観たので感想を書きます。

 

今年の一月に観た舞台で情緒をぐちゃぐちゃのギッチョンギッチョンに破壊されてから早半年以上。

 

aki-mi-tori.hatenablog.com

 

韓国でミュージカルになったと聞いて、どう変わったか気になり駆けつけました。

コロナの感染者数が多く、来日が大丈夫かと不安でしたが、無事公演を重ねることができ感謝の気持ちでいっぱいです。このまま千秋楽を迎えられますように。

 

韓国語はわからないし韓流アイドルも知らない人間でしたが、日本語字幕のおかげで楽しめました。信じた甲斐があった。

以下、ネタバレありの感想です。

 

※ミュージカル『Equal』の内容及び舞台『Equal-イコール-』の脚本のネタバレがあります。

※あらすじ紹介はないよ

※俳優さんにはあまり触れていません

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1日目、おどろおどろしい映像の後にペストマスクに全身黒ローブの男が中央へ進む。緊迫した空気の中でサッとマスクを外すと、親しんだ役者の笑顔が現れる。緊張と弛緩の繰り返しが終始良いグルーブを産みますね。7日目、日曜日にまた同じ演出が繰り返されるのがエモい。

 

5分前仮説というものがあります。

ja.wikipedia.org

46億年前のビッグバンからこの数十年の個人の記憶まで、それらが全て5分前に構築され、あたかもそれより前にあったかのように存在しているという考え方です。お話としては、それに近いものだと感じました。

この狭い小部屋も、陰惨な魔女狩りが繰り返される街も、1週間前に作られたものではないか。現実には存在せず、『そうある』と自分たちが認識しているものに過ぎないのではないか――答えがない以上、現状を受け入れて生きていくしかないという、2人の物語。

 

末満さんが演出したものは拝見していないので、これまた一面的な見方になりますが、1月に観た舞台では最後は互いを受け入れられずにドロドロ・ベリー・バッドエンドを迎えていたような気がします。しかし今回のミュージカルの脚本は手と手を取り合って未来へ進む、後味のいいハッピーエンドでした。これはこれでよし。まあアイドルに殺し合いさせるわけにはいかないよな。

2人の間にはイコールの記号があればいい、右辺と左辺は自由に考えよう。タイトル回収が気持ちいいと共に、テオとニコラがイコールでもノットイコールでもあるという、両義的で良い台詞です。

 

音楽は良かったですね〜。弦楽器がヨーロッパや中世の香りを醸し出しつつ、全体のジャンルはどちらかというとDTMに近い感じがしました。ビートと重低音が効いてるのがたまらない。これは自宅の配信ではなかなか味わえない。

役者陣も歌・感情表現ともにすごく豊かでした。言語がわからなくても良さは伝わるものですね。あとダンスが非常に上手いのはアイドルならでは。特に好きなのはオデットの手紙を読む時の歌と錬金術の書物を読む時の歌。オデットの手紙の歌ではダンスがいいんですよ、中世には絶対存在してないキレッキレのダンスが。

 

スクリーンや光の演出は鮮烈的。スクリーンで背景を自由に変えることができると、まるで小説を読んでいるかのような、情景描写ができるというのは新たな発見です。狭い部屋、という場所は1つですが、同じ窓でも烏の話をする時は窓の外にカラスがいたり、窓の隙間から覗く月の形や色で心情を表現したりするのがよかったです。一面にスクリーンが現れるので、最後のシーンは浮遊感さえ感じました。こんなの舞台芸術じゃなくてアートだよ。

 

とまあ2回観に行く程度には満足したのですが、欠点があるとすれば短いことかな……この話を2時間弱におさめるのはちょっと無理がない? 謎解きのシーンを土曜日に詰め込んでいるのもあって、哲学的な主題や真相を知ったテオ・ニコラの葛藤のシーンがサッと終わってしまったのは残念。ミュージカルという媒体上、複雑な内容を扱うのは難しいのでしょうか。張り巡らされた緻密な伏線と君と僕の同一性という哲学的主題に興味を持った貴方は舞台版『Equal-イコール-』へGO!!

 

『Equal-イコール-』は本当に脚本と物語が神がかりだと思っているので、このような形で世界に物語が広がっていくのは素晴らしいことです。本公演に携わった全ての皆様に幸福が訪れますように……ついでに舞台版の公演もまたやらないかなあ。物販に脚本があるとなおよい。