何かに狂ってる

もう私は、狂うしかないのでしょう。

観劇記録「みんなのご機嫌よかれが肝心かなめ」「横浜キョンシーRENDEZ-VOUS」

こんにちは。秋見鳥です。

二日連続で別の舞台を見に行く異常者をやっていました。それぞれとても面白かったです。

 

※ここから下記の公演のネタバレがあります
劇団やりたかった「みんなのご機嫌よかれが肝心かなめ」
Daisy times produce「横浜キョンシーRENDEZ-VOUS」

 

 
劇団やりたかった「みんなのご機嫌よかれが肝心かなめ」 2024年5月31日夜公演

劇団やりたかったは、以前現代が舞台のものを見に行った時、あまりにもリアルすぎて胃痛を堪えながら出てきた経験があるので、今回はどうかな……というところでこわごわとしながら行きました。プププとした笑いをテーマにしている割には落とすところとことん落とすイメージ。どん底からの這い上がったりすかしたりするところで笑いに変わるからなるほどなあと思う。

会場は座・高円寺。ここは広くて椅子が綺麗でトイレが広いので本当に助かる。安心感。

東海道中膝栗毛」をベースに弥次喜多道中の小田原でのお話。原作を読んでいないので相違点がどのくらいあるのかはわからない。

小田原へやってきた弥次さん喜多さんは、外郎屋が通りを挟んで二軒、お客を取り合うところへ遭遇する。もとは一つの外郎屋、兄弟が喧嘩したせいで兄の店と弟の店に分かれてしまったのだ。旅の途中として弥次と喜多が駐留すると、江戸下りの阿呆が来たと評判になり、小田原中のものたちが金を巻き上げにやってくる。言われるがままに借金を積み重ねた弥次・喜多は、仕方なく身を切って働くことになる。他人をいびることに関してはどちらも天下一品の外郎屋。ついにその弁舌を奮って客を呼び込むことに成功した弥次は、呆気にとられる小田原の連中を置いて逃亡、お伊勢参りの旅はまだ続く……

ちょっと老獪したスケベおやじの弥次さんと若さが武器の喜多さん(あってるよね?)の凸凹コンビが絶妙な雰囲気を生む感じがする。

見所は見てきた人には言うまでもないけれど、終盤、もう失うものがないところまで来た弥次さんが口上を張って両店舗の外郎を売り込むところ。役者さんの熱意と腕が試される場で、こちらも息継ぎを忘れて見守ってしまった。仲違いしているような外郎が売れるわけもないよな、とは見ていて思ったが、行きはこっち帰りはこっちで買えばいいと口上で言うのはうまいもんだなと思った。そしていがみ合っていた外郎屋が一緒に口上を覚えようとするところも。愚直さと素直さが大事ってことですね。変な意地を張ったり、嫌悪をむき出しにしたりしないでさ。

Daisy times produce「横浜キョンシーRENDEZ-VOUS」6月1日昼公演

結構設定が凝っててすごいです。

舞台は架空の日本、表は治安維持部隊、裏はマフィアが牛耳る横浜九龍街。連続殺人鬼が巷を騒がせる最中、主人公ソラの親友ホムラはその殺人鬼に殺されてしまう。謎の死体科学の先駆者・ニュイにそそのかされ、ソラはホムラをキョンシーとし、生き返らせることに成功する。その代価として治安維持部隊に協力し殺人鬼を捕まえるように命令される。

いろいろとどんでん返しがすごくて脚本なかなかやるなあと思いました。

  • 治安維持部隊の隊長一角堂リンは右腕的存在である五色丸(棒の殺陣がかっこいい)を、キョンシー化の実情を知るために殺している。ここ、「背が高くてかっこいいめちゃ強お兄さんが可愛い系のめちゃ強お姉さんに忠義を示す」という構図がすごく美味しい
  • マフィアのボスの右腕的存在ユイ=ミェン(めっちゃきれいな鉄扇で戦うお姉さん)が頭にキョンシーの札をつけているのはブラフ。実はボス・テッセンのほうがキョンシー化させられている。ここ、鉄扇のお姉さん→ボスのくそ重感情が絡むのが美味しい。あと最後のキャスパレみたいなやつ(何て言うんだ? エンディングダンス?)で扇子で顔隠しながらキスするのきゅんきゅんした。ただ鉄扇使ってる人はテッセンではない、というのは何度か観ながら頭の中で修正した
  • 殺人鬼シーフが科学者ニュイのキョンシーなのかなとは薄々勘付いていました。もともと富田麻帆さん目当てで行ったのでいろいろな表情が見れたのは眼福。ラストでも「これは一時の別れ」みたいなことを言っていたのが諦めていない感じでよかったですね~。拙者、もう後戻りができないレベルに狂っているマッドサイエンティスト好き

あとはマフィアの息子アルがニュイに相対する死体学者として登場するところは胸が熱くなりましたね~。アフタートークで暴露された「ぼそぼそ喋るところはピンマイクに向かってしゃがんで喋る。張り上げていいところでは立つ」というのもプロだなぁと感心しました。最後のシーンでボスから刀をもらうところもね、ボスがキョンシー化した後に無効化させられていた以上、あれが本当に存在したシーンなのかどうかはわかりませんが、すごくじーんと来ました。

そして双子ちゃん。ひらひらふわふわのゴスロリ衣装かわいい! 歌もかわいい! ダンスもかわいい! ペンライト持ってたら振ってた。ニコイチのマスコットでありながら九龍街の外からの刺客という権威的な存在というのがとっても美味しい。

そしてそして殺陣。それぞれ業物が違うので、非常に見所がありました。特に印象深いのは治安維持部隊隊長一角堂リンさんのサーベル、五色丸の棒(くるくる回っていた)、調理部隊隊長玄森タケシ(余談ですが四天王の名前四神モチーフなのいいですよね)の中華鍋(よく殺陣に落とし込むなあと)、そしてマフィア側の鉄扇と剣。素人なので正直良し悪しがわかるわけではないのですが、速さとそして本当に戦っているかのようなアクションがすごい。

キョンシーは人間の記憶をもとに動くだけで本質的に生き返ったわけではない、というのは何となく序盤から思っていたことではありました。そしてそうである以上キョンシーの存在は認められないというのもなるほど、確かにそうだろう。一時とはいえ一心同体となった相手を失って、それぞれのキャラクターがどうやって生きていくのかというのは気になるところではある。

一つだけ不満があるとすれば座席が格子配置でなかったこと。私、前の人の頭でポジションゼロ全く見えませんでした。まあこればっかりは劇団の努力でもどうにもなりませんから、仕方ないですね。