何かに狂ってる

独り言ログ置き場です。

森美術館「STARS展」に行ってきました

はじめまして。秋見鳥と申します。

 

東京は六本木、森美術館で開催中のSTARS展に行ってきたのでその感想を書きます。

 

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展覧会のネタバレがありますのでご注意ください。

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現代美術の旗手6名を取り上げた今展覧会で、それぞれの作家のエッセンスをしっかり感じ取ることができてよかったです。

 

村上隆李禹煥杉本博司の作品は初めて鑑賞しました。村上隆はお花の絵しか知らなかったので、阿吽の大きな像や原発をテーマにした作品、それからアダルティなフィギュアを見て驚きました。特に「原発を見に行く」というテーマの映像作品は、ほのぼのとした映像と前向きな歌詞の歌が、アイロニカルで印象に残りました。かつては毎日のようにテレビで流れていた言葉が、やがて語られなくなり、過去のものとして消費されていく。そうではなく、今も存在し続けているということを改めて実感しました。
もの派、という言葉は学生時代に現代アートの授業で聞いたことがあるけれども、作品そのものを見たのは初めてでした。美術館の床にまるで外さながらに並べられた石、無造作に、されど作為的に置かれたパイプのようなもの、奥に見える抽象画。なるほど、これがもの派と実感するには十分でした。
杉本博司の作品は、時の流れや歴史を描いているのがわかりました。解説の「博物館の剥製を片目で見たらまるで生きているようだった」というエピソードが印象深かったです。映像作品で作られていた庭園は実際に見学できるそうなので、機会があれば行ってみたいですね。

 

草間彌生の作品は数年ぶりに、狭い展示室につまむくらいだけ並んでいると物足りないような感じがしました。点描で描かれた作品は結局よくわからないけれど、同じように見えて実はひとつひとつ違う、というのが面白さではないか、と新たな発見。鏡とLEDを使った展示はまさに無限。上下左右に空間の広がりができるのが美しかったです。

 

奈良美智は家が展示室にぼん、と置かれていて、ドールハウスのようでかわいらしく面白かったです。私が子供だったら中に入って遊んでしまいそう。家の中に置かれていた紙には何が書かれていたのでしょうか。屋根の上にお馴染みの顔が大きく造形されていたのですが、周辺に展示されたスケッチには「THE MOON」と書かれていました。とすると、その家の顔と向かい合うように展示されていた大皿は太陽? 想像が膨らみました。

 

一番印象に残ったのは宮島達男の作品です。彼の作品は東京都立現代美術館でも見たことがあったのですが、改めて考えさせられました。「東北」「海」「生死」という単語が並べば、私たちは同じ一つの出来事を思い浮かべずにはいられません。水音の聞こえる展示室の中で、眼下に広がる数字が、1から9を数え、また1から9を刻み始めるのを見る。解説によると、この作品を人々が眺める映像も含め、新たな展示となるそうです。あの日、私は特に揺れを感じず、テレビを通して津波がやってくるのを眺めているだけでした。たかがプログラムとはいえ、そこに疑似的な生命を見出してしまう。多くの人々が地震津波に飲みこまれていくのを見ていたあの日と同じものを見ているような、そんな気持ちになる作品でした。

 

特別展を出て、2つの作品が目に留まりました。1つは、チャイコフスキーを演奏する映像から映像をミュートしたというもの。普段はなかったことにしたり見過ごしたりしているものを見るきっかけになるのではないか……といったことが解説に書かれていたと思います(うろ覚えです)。弦楽器を抑える音やピチカートの音が増幅されているとはいえ、結構大きくて驚きました。2つ目の作品は、古着とキリスト教の像を合わせたもの。先進国から発展途上国に流れ込む既製品の衣服が破壊でもあり、新たな未来への創造でもある、という批判と希望が半々の作品。中央に衣服の波に逆らうように大きな十字架が配置されているのですが、磔にされたイエスの姿は足元のみで、波を越えた箇所には跡形も残っていないというのが印象に残りました。キリスト教というのも、かつては人々の価値観や生活のもととなっていたものですが、資本主義や近代化の波にのまれたという点で、先進国の人々が発展途上国の状況について、この作品を通して共感するには十分な素材だと思いました。

 

森美術館、STARS展。現代アートの代表者の作品のいいところを少しずつ見ることができ、足をのばして行ってよかったです。

お近くにお立ち寄りの際は、ぜひ鑑賞してみてください。

 

森美術館 公式サイト

www.mori.art.museum